ソフィア先生の補習授業

「4時間目はいよいよ史上最大の作戦「オペレーション・バルバロッサ」だ」
「ところで上のトップ絵は何でクリスマスなの?」
「なんとなくだ。特に意味などない」
「まぁいいわ。・・・で、「オーバーロード(大君主)作戦」とどっちが規模が上なのよ?」
「・・・・。「オーバーロード」だ」
「やっぱりね」
「だがバルバロッサ作戦も規模なら負けていないぞ。
「オーバーロード作戦」と「バルバロッサ作戦」では、動員兵力約300万人とほぼ互角だ。
ただ、兵器の数が一桁くらい違うけどな。
物量があって羨ましい限りだ」
「だがバルバロッサ作戦は、ドイツ史上最大の作戦だ。
ドイツ限定とすれば間違ってはいない。
準備期間もオーバーロードのほうが遥かに上だしな。
さて、このバルバロッサ作戦だが、この作戦を語るにはイタリアの役立たずっぷりを語らなければならない」
「ついに来たということか」
「その前に、第二次大戦におけるイタリアの歴史を見てみよう。
第一次大戦では戦勝国となったイタリアも、世界恐慌の波に押され、国内は日本・ドイツと同様に失業者の山ができていた。
そのために国内は大混乱、明日の生活さえも保証できないという社会不安が増大していた。
単独での国内建て直しができないと判断したイタリアは、日本やドイツのように植民地支配をすることで国の建て直しをすることを決意する。
要するに大航海時代と同じやり方だ。
そんなこんなでヒトラー総統
がドイツで政権を取ったように、イタリアではムッソリーニ
が政権を取っていた。
イタリアは対ソ連包囲網として、1935年には日独伊防共協定を結んでいた。
つまりイタリアはドイツの同盟国ということになる。
ところが1939年9月のポーランド侵攻ではイタリアは動かなかった。
それはいいとする。
イタリアの位置からポーランド侵攻を手伝うことは難しいからな。
そして月日は流れ、1940年5月のフランス侵攻でイタリアは動くことになる」
「同盟国だからな。そりゃドイツを助けるだろ」
「ところがイタリア軍のやったことを見るとあまり役に立ったという戦いはない。
なぜか?
それはイタリアが参戦したのは6月13日ということを考えればわかることだ。
フランス攻防戦がはじまったのが5月10であり、パリ入場は14日、そしてフランスが降伏したのは6月22日だ」
「それって・・・・。イタリアはフランスが降伏直前になってようやく参戦したってこと?」
「そうだ。イタリアはドイツ軍がここまで強いとは思ってもいなかったんだろう。
マジノ線に対して自信を持っていたのはフランス、イギリスだけじゃない。イタリアも持っていたんだ。
つまり、イタリア軍の頭の中は第一次大戦のときと同じだったってことだ」
「ところがドイツ軍の勝ちが確実となり、ムッソリーニは漁夫の利を得ようとして参戦。
イタリアはほとんど何もせずに戦勝国となった。
そしてヨーロッパの覇者となりつつあったドイツの強さにムッソリーニは野心を持ち始める。
ローマ帝国の復興という野心をな」
「第二次世界大戦の指導者は皆、少年の心を持った大人だったんですね」
「でっかい夢よねぇ・・・・」
「夢というよりは誇大妄想だろう。
20世紀になってもこんなことばかりしてたのか、あいつらは」
「第二次世界大戦は「ヒトラー総統の野望」で片付けられてしまうことが多い。
しかし、よくよく見れば「信長の野望」と同様に、野心を持っているのはみんな一緒だったことがわかる。
何せ侵略戦争をしていたのはドイツだけではなく、イタリアやソ連もやっていたのだからな。
かくして「夢はでっかく世界征服!!」と、夢見る少年の心を持ったまま大人になってしまったムッソリーニは、大軍を率いて行動に出始める。
だが、ムッソリーニが脳内エンドルフィン120%全開で作った仮想戦記にうっとりとしてしまったために、ドイツが負けることになるとは誰がこのときに予想できただろうか?」
「エンドルフィンって、をい・・・・」
「どいつもこいつもアホばっかだな。
世界はでっかいオモチャ箱ってのはこいつらのためにある言葉だ、まったく」
「あー、だから21世紀現在のおじいちゃんたちが「あの頃はよかった」って言っているんですね」
「いや、爺さんたちが「よかった」って言っているのは多分50年代とか60年代の、戦後の話じゃないか?」
「そんなことはどうでもいい
そもそも日本人は『大東亜共栄圏』などというアジア限定の帝国を作ろうとしていたに過ぎん。
なんともスケールの小さい話だ。
小さい!小さいのぉ!おんどれらっ!
狙うんなら世界ぜよっ!
とか言うヤツはいないのか?」
「・・・・・・・。なんで坂本竜馬?」
「昔から日本人は「天下を取る」とか「全国制覇」とか言っても日本国内限定ですからね。
やっぱり坂本さんは偉大でした」
「偉大って、をい・・・。そー言う意味であの人は偉大だったわけじゃ・・」
「とりあえず日本よりもドイツの方が夢があったというわけだ。
本気で世界を征服しようと思っていたドイツに比べて、日本は「何とか負けなければいい」と思っていた程度だからな。
一番でかい夢でも「ドイツと組んで世界征服」だろ?
「日本単独で世界征服」なんて言ってる連中は皆無だ。
旧日本軍の規模の小さいこと。
それなのに、戦後になったら日本は、「ドイツと並ぶ悪の大帝国」扱いなんだから、なかなか面白い仮想戦記だ」
「さて、自らの脳内麻薬でラリったムッソリーニ
が動き始めたのは1940年9月のことだ。
この頃と言えばドイツがイギリス攻略に失敗し、ソ連はルーマニアを侵略して、チョビ髭
と フデ髭
がタッグを組んで世界征服を着実に進めていた頃になる。
1940年9月13日、ムッソリーニ率いるイタリアはヒトラー総統に無断で自国の植民地であるアフリカの一国リビアからエジプトへ向けて侵攻を始めてしまう。
ソ連とドイツの行動はヒトラー総統とスターリンの密約によってあらかじめ決まった行動だったが、このムッソリーニは勝手に動いてしまったのだ。
ヒトラー総統はこの行動に驚いたが、すでに「バルバロッサ作戦」の準備で忙しかったため、イタリアをどうこうするわけにもいかない。
この当時のエジプトはイギリスの植民地だった。
ちょうど独英戦の直後ということもあり、エジプトには7万の兵士しかいなかった。
ムッソリーニ率いるイタリア軍は30万の大軍を率いてエジプトに侵入。
三日後には国境から90キロのジディ・バラーニを占領することに成功する」
「4倍以上の戦力だからな。そりゃ快進撃も続くだろ」
「そう。ここまではよかった。大軍で一気に国境を突破したまではな。
ところが、ここからイタリアの腰抜けっぷりが炸裂し始める」
「国境侵入が成功。
イギリス本国はドイツ軍との戦闘でダメージを受け動けず、現地のエジプトを守るイギリス兵も数万に過ぎない。
一気にエジプトを占領するチャンスだ。
ドイツ軍ならばこのチャンスを逃さず、さっさと首都カイロを落とし、エジプトを占領するだろう。
そうすればインドからの補給路を断つことができるし、エジプトから繋がる植民地を占領して一気に強大国になることも可能だからだ。
しかし、イタリアはそれをしなかった」
「なんで? やっぱソ連?」
「いや、ソ連は関係ない。というかどこの国も関係なかった」
「じゃあなぜだ? ここまで絶好のチャンスなのになんで攻めないんだ?」
「それはエジプトに侵攻したイタリア軍は、占領した国境から90キロのジディ・バラーニで、バカンスを楽しんでいたからだ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・ねぇ。いまバカンスって聞こえたんだけど?」
「肯定だ。バカンスと言った」
「・・・・・・」
「あ! わかった。バカンス作戦ってのがあるのね! きっとその準備なのよ!」
「残念ながら違う。文字通りバカンス。休暇だ。
エジプト遠征で疲れていたイタリア軍は1940年9月に侵攻したあと、3ヶ月の間、何もしなかったんだ」
「占領した町中で、酒タバコはもちろんバクチに夜遊び女遊び。
イタリア兵は戦争中なのにも関わらず遊んでばっかりだった」
「ちょっと待て!戦争中なんだろ!」
「そうだ。人と人が殺し合い、国の存亡を賭けてお互いの国民が命を賭けて戦う極限状態だ」
「しかも自分の勢力を広げるこれ以上ないチャンスなんだろ?」
「その通り。周りに敵はいない。そのことは誰の目に明らかで、前進するだけで、いともあっさり勝利することができただろう。そうすればインドとイギリスの補給路も断つことができ、その後の戦いが有利になるのは間違いなかった」
「なのにイタリアは何もせずに遊んでたのか?」
「先ほども言ったとおりだ」
「なぜそんなアホなことを!?」
「だってイタリアだぜ?」
「・・・・・・・・。理解できん」
「まぁ、理解しろってほうが無理だろ」
「・・・・・。ひょっとして連中にとってエジプト遠征って、楽しいエジプト旅行だったわけ?」
「そんなところだな。
エジプト遠征のイタリア軍が遊んでばっかの隙を狙って、当然イギリス軍は反撃作戦の準備に取り掛かる。
ドイツ軍との戦争も一時休止し、3ヶ月も時間的余裕があったわけでイギリスの兵力は続々とエジプトに集まり始めた」
「イタリア軍が遊んでいた間に兵力をそろえたイギリス軍は反撃作戦を開始した。
1940年12月6日、イギリス軍の反撃作戦「コンパス作戦」が発動。
三日後の1940年12月9日にイタリア軍とイギリス軍は初めて戦闘をすることになる。
英伊戦の開始だ。
ところがこのイギリスVSイタリアの戦いは一方的なイギリスの勝利に終わることになる」
「当時のイギリス軍の主力戦車はマチルダUと言って、イタリア軍の対戦車砲は通用しなかった。
対戦車砲の弾はイギリス戦車の装甲に弾かれてしまうんだ。
イタリアは山国で、戦車自体がそれほど重要視されていなかったこともあり、戦車の性能も劣る上に数も少なかった。
兵器の性能ではイギリスのほうが圧倒的に強かったんだ」
「イタリアの戦車はそんなにダメなんですか?」
「あえて言おう、カスであると」
「なぜギレン総統?」
「戦車ってのは敵の装甲をぶち抜き、敵の砲弾を弾く。
これが何よりも大切だ。
だが、イタリア戦車ってのは攻撃力も低いが、防御力が最悪に低い。
ただでさえ装甲が薄いのに、リベットで鉄板を止めているから敵の砲弾が当たると戦車内でリベットがピュンピュン飛んで戦車兵を攻撃する」
「うぁ・・・最悪」
「まさに歩く棺桶、死神の住みか。
ドイツ戦車は装甲は溶接技術で繋げる。
時間はかかるが、敵の砲弾を弾くことができるからイタリア製よりは安全だ。
その上ドイツ戦車は装甲に丸みを帯びている。これによって応力集中をさけることができ、さらに防御力を上げることが可能になった。
大量生産ではできないこの手作業の技術で、ドイツ戦車は世界最高水準の戦車に成り得たわけだ」
「応力集中って?」
「応力ってのは圧力と同じだ。流体、つまり気体と液体の場合は圧力、固体の場合は応力と言う。
物体にかかる力を面積で割ったもの。これが応力で、SI単位で表わすとニュートン毎平方メートルになる。
SI単位ってのは国際基準の規格、メートルやキログラムなんかがそうだ。
そして、応力ってのは切れ目や角なんかがあるとそこに集中してしまうことが引っ張り試験、つまり実験でわかっている。
2002年に静岡県の某原子力発電所で「制御棒が折れた」ってのは、この応力が一箇所にかかる応力集中を起こしたからで、こういうことがあるからこそ応力が一箇所に集中しないように角を丸めるなど工夫をしないとならないんだが、どうやら設計者がそれを理解していなかったらしい。
なお、制御棒ってのはウラン原子が中性子によって連鎖分裂していく過程を制御する棒で、この棒が中性子を吸収してくれるからこそ原発は原子力爆弾にならないわけだが――――」
(何言ってるかさっぱりわかんねぇ!)
「つまり、原発が事故を起こしても核汚染されるだけで、核で吹っ飛ぶということはないということでしょうか?
個人的には核汚染で生きながら苦しむよりは、核で吹っ飛んで痛みを知らないまま死にたいような気もするんですけど・・・・」
「だが、石油に依存するわけにはいかないからな。火力発電所も原子力発電所も、その原理が作用流体が液層と気層にまたがるランキンサイクルである以上、とりあえず燃やすものがあれば何でもいいんだが、今のところ石油と核燃料以外じゃ必要な電力を得る温度まで上がらないし、石油だと二酸化炭素が出ちまうから核燃料に頼らないとならない」
(もっとわかんねえよ!)
「とりあえず「角がカクカクよりも丸いほうが壊れにくい」ってことを知っていればいい。
つまり「ドイツ戦車はドイツの熟練技術者がいてはじめて強い戦車が作れた」ってことだ」
だが、それ以上に差があったのはイタリア兵の気質にある」
「戦争中にバカンスを楽しむ連中だ。
だいたいは想像がつくが・・・・」
「イタリア兵の腰抜けっぷりを表わすエピソードはいろいろあるが、そのうちのいくつかを紹介しておこう。
イタリア兵はイギリスが攻めてくると占領した要塞に立て篭もることがあった。
だが、ドイツ軍にフランス攻略戦でやられたイギリスは要塞の攻略の仕方を学んでいた。
要塞に篭った連中は補給路を断てば孤立し、援軍と補給物資を経てばすぐに落ちる。
だからこそ補給路には見張りを立てて孤立しないようにしなければならないのだが、
イタリア軍は夜になると、「こっちが眠ければ相手も眠い。だから攻めてこないだろう」などと言って見張りも立てず眠りこけた挙句に奇襲を喰らうことがあった」
「見張りも立てずって、をい・・・・」
「まだあるぞ。イタリア軍の兵士が夜中に目を覚ますと小隊の隊長がどこかに行こうとした。
部下の兵士はどこに行くのかと訊ねた。
すると隊長はこう答える。
「俺は国のためには命をかけない。俺は奴隷じゃないからな」
荷物を整えながらその隊長は歯をキラリと光らせ、
「俺が命を賭けるときは惚れた女を守るときだけだ!アディオス!」
と、笑顔でさわやかに言うと戦線から離脱していった。
部下は引きとめた。
「隊長!待ってください!」
そして振り向いた隊長に部下はこう言った。
「俺も一緒に行きます!」
と。
かくして朝になり、他の隊員が目を覚ますと隊員の数は減っていた。
日が経つに連れ、一人減り、二人減り・・・・そして、イギリス兵と戦う前にその小隊は姿を消した・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「かくしてトマトを使わせれば世界一と自称する太陽と情熱の国イタリアの兵士は、「俺が戦うときは惚れた女を守るときだけ」と笑顔でさわやかに言いながら戦場を去っていった。
イタリアの男は恋に生き、愛に死ぬ。
陽気なラテン民族イタリア人はこのようにしてエジプトでイギリスに敗北を重ねていった・・・・・」
「・・・・・・・・」
「そこ。何か言いたそうだな」
「いろいろ言いたいことはあるけど・・・・・。イタリアってやる気あるわけ?」
「ない。聞いてのとおりだ」
「なんて言うか凄まじいな」
「なんでこんな連中と手を組んだの? バッカじゃない」
「仕方ないだろ! いくらなんでもここまで酷いとは思わなかったなんだ!
第一次大戦でもイタリア兵は酷かったが、あの頃はまだ弱いだけでまともに戦ってくれてた。
まさか、あの頃より酷くなっているなんてことは、きっとリハクの目を持ってしても見抜けなかった!」
「なんで北斗の拳?」
「イタリアの方々は愛のために戦うのですね」
「愛のために戦うのは大いに結構だが・・・戦友を見捨ててどうする!?
ドイツ兵はきっとこう思ったさ!
イタリア兵がもし日本兵なら!」
「ドイツ兵や日本兵は、死ぬとわかっている無謀な作戦も祖国のためにあえて承諾してたのにねぇ・・・・」
「だから言ってるだろ?
イタリアのやる気のなさは尋常じゃないって。
くそぉ、イタ公がここまで足手まといってわかってれば・・・・っ!」
「イタリアの凄まじさはまだまだ序の口だ。
先ほど言ったイタリアとイギリスの初の戦闘である12月9日の戦いは、イギリス軍9万人に対し、イタリア軍25万人の戦いだった。
つまりイタリアはイギリスの2.5倍以上の兵力があったことになる。
しかし終わってみればイタリア軍はほぼ壊滅。
イギリス兵の死者7人に対し、イタリア兵の捕虜は4000人以上というこれ以上ないほど一方的な結果に終わった」
「7人? 7人っていうと・・・。1,2,3,4、5,6,7?」
「凄いな。両手で数えられる数だ」
「こうして独断専行で勝手に仕掛けたイタリア軍は、みすみす勝てるチャンスを不意にしたうえに、返り討ちに合い、ほぼ壊滅。
あっという間にエジプトから撤退。
勢いに乗るイギリス軍はエジプト国境からリビアへ侵攻。
リビアのキレナイカ地方へ侵入したイギリス軍は足を止めずに軍港と航空基地のあるトブルク要塞を攻略し、
2月9日に800キロ進んだところで補給と休養のためにようやく止まった」
「ムッソリーニはヒトラー総統に泣きついてきた。
援軍を派遣してくれ!このままではイタリアの植民地が全てパーになってしまう!と」
「はっきり言って、うざいことこの上ないのだが、敵はイギリスでもあることだし、ヒトラー総統は援軍を派遣することにした。
ありがたくて涙が出るような美談だな。
対ソ連戦を控え、戦力は少しでも整えておきたかったこの状況で援軍を送ることを決心した総統の恩情に感謝するべきだ。
この援軍の指揮官にはフランス攻防戦で主力部隊を率いて、その名声を世界に知らしめたエルヴィン・ロンメル中将
が選ばれ、第5軽師団と第15戦車師団が送られることになった。
これがヴォルフの所属するドイツ・アフリカ・軍団。通称DAKだ」
「ロンメル閣下燃え〜!!」
「ただでさえソ連侵攻の準備で忙しかったドイツだが、この援軍を得たムッソリーニはこりずに独断専行で再び軍を動かし始める。
1941年3月、イタリア軍はギリシアに侵攻。
しかし、またもや勝手に仕掛けておきながら敗北に次ぐ敗北
おまけにイタリア軍の敗北をきっかけにユーゴスラビアでクーデターが起き、ユーゴスラビアの親ドイツ政権が倒れて、反ドイツ政権になってしまった。
ドイツ軍はすでにバルバロッサ作戦始動段階だったが、このバルカン半島の騒ぎを静めるためにやむを得ず軍を派遣。
かくしてバルカン半島は3週間で制圧できたものの、バルバロッサ作戦は5月始めには開始するはずだったのに、6月後半にまで延長されることになってしまった」
「恐るべしイタリア・・・・。動かない方がマシだったというのはある意味最強よね」
「敵よりも恐ろしい味方とはよく言ったものだ」
「いや、まだ手ぬるい。イタリアの恐ろしさはこれから半年後に発揮されることになる」
「こうしてイタリアが余計なことをしてくれた結果、ソ連侵攻作戦「バルバロッサ作戦」は延長に次ぐ延長を重ね、フランス降伏からちょうど一年後の1941年6月22日に発動された。
動員兵力300万人
動員戦車3580両
まさにドイツの総力を結集したドイツ史上最大の作戦だ。
目標はソビエト連邦共和国の崩壊。
ロシア西部のソ連陸軍の壊滅、逃亡の阻止。
レニングラード、モスクワ、ウクライナ、コーカサスなどの地下資源の確保。
なにより、電撃戦で米英が動き始める前に決着をつけることだった」
「バルバロッサという名前には二種類の意味がある。
一つはフリードリヒ1世という神聖ローマ帝国の皇帝の通称『バルバロッサ(赤鬚王)』だ。
バルバロッサは1190年の十字軍で聖地エレサレムを奪還した英雄で、スターリンを人類の敵と批難していたヒトラー総統は自分の姿をこの伝説の皇帝に重ねていたのかも知れないな。
このときの十字軍にはイングランドの名君リチャード一世が参加している。
もう一つは単純で、「赤髭」という意味がある。
つまりはアカの髭、スターリンのことだ。
こっちの方がわかりやすいな。
そして6月22日はナポレオンがロシア遠征をスタートされた日でもある。
ヒトラー総統はナポレオンを超えようとしてあえて同じ日を選んだ。
結果もナポレオンと同じになるとは知らずにな」
「かくしてバルバロッサ作戦が始動するわけだが・・・・。
一方のスターリンはまったくこの作戦に対して対応策を練っていなかった」
「なんで? やっぱ隠密だったから?」
「いや、いくらなんでもこれだけの規模の作戦を隠すのは難しい。
実際、ソ連軍の諜報機関はバルバロッサ作戦の存在を早い段階からわかっており、しかもスターリンはこの報告を何度も何度も受けていたことがわかっている」
「なぬ? スターリンはこの作戦を知っていたのか?」
「ああ。もしもスターリンが諜報員の報告に従っていれば、バルバロッサ作戦は初期の段階で潰れていただろうことは確実だった。
だが、バルバロッサ作戦に対して何の準備すらしていなかったソ連は完全な不意打ちを喰らうことになる」
「どうして何の準備もしなかったんだ? ドイツ軍が来るのはわかっていたのに」
「スターリンさんお得意の「全く他人が信じられない症候群」が発病したのでしょうか?」
「そのとおりだ。スターリンは部下の重なる報告にも全く耳を貸さなかった。
これはきっとドイツとソ連の仲互いを狙うイギリスの策略だ、と思ったわけだな。
ドイツはドイツでイギリスの策略という情報を流していた。
つまりスターリンは、ドイツスパイの言うことは信じたが、ソ連情報員の言葉は信じなかったということだ。
このフデ髭の無能っぷりが炸裂したためにドイツのソ連侵攻はいともあっさりと成功することになる」
「その上、この戦いの数年前の赤軍大粛清によってソ連の有能な人材はことごとくあの世に行ってしまった。
ソ連誕生を潰そうとした帝国主義国家との戦争を勝利に導いた有能な人材はスターリンが自ら粛清し、あとに残ったのはスターリンの命令を実行するだけの傀儡将校のみだった。
スターリンが右と言ったら右、左と言ったら左。
これでは現場の判断もクソもない。
スターリンがようやくドイツ侵攻に気づいたとき、すでにドイツ軍はソ連を侵攻していたんだ」
「ドイツ軍の軍勢は大きく分けて三つ。
バルト海東端の都市「レニングラード」を狙う北方軍集団
首都「モスクワ」を狙う中央軍集団
肥沃な穀倉と地下資源を持つ「ウクライナ地方」を狙う南方軍集団」
「ちなみにソフィア大尉が所属するLAH師団は南方軍集団に配備されている」
「ドイツの首脳部は「バルバロッサ作戦」によって2ヶ月でソ連は落ちるだろうと考えていた。
実際ドイツ軍の勢いはすさまじく、連勝連勝。
北方軍集団はドヴィナ川を越えレニングラードへ進軍。
中央軍集団はモスクワを目標として、スモレンスクまで達することになる。
だが南方集団はおもわぬ強敵の出現にその足をストップすることになった」
「強敵?」
「そう。ソ連が世界に誇る傑作戦車 T-34(ティーさんよん)」
←T34/76
「6年間の開発期間を得てT34がドイツ軍の前に立ちはだかった。
1941年の時点でのドイツ軍の主力は三号戦車だった」
←三号戦車
「「風の谷のナウシカ」で風の谷の爺さんたちが敵から奪って城に突撃していたアレだ」
←アレ(三号突撃砲)
「ちょっと待て。なんでナウシカにドイツ軍の戦車が出てくるんだ?」
「監督の趣味だ。
そんなことはどうでもいい。
とにかくドイツ軍の主力戦車は攻撃力、防御力、そして機動性でさえもこのソ連製新型戦車には敵わなかった。
ちょうどこの頃には秋の長雨が続いて道は泥沼と化し、ドイツ軍の戦車は動きが取れなくなっていたんだ。
恐るべきロシアの秋。
泥将軍はドイツ戦車の機動性を完全に奪うことになる。
だがT34はこの泥沼でも稼動できるように設計されていた。
広いキャタピラ―――キャタピラってのは商品名だから正しくはないがわかりやすいので便宜上こう呼ぶことにする。
で、そのキャタピラは泥沼でも戦車が沈まないように幅が広く作られていた。
このT−34ショックは大きかった。
電撃戦の生みの親であるハインツ・グデーリアン将軍
は、T−34の脅威を感じ、軍本部へ至急新型戦車を開発するように要請しているほどだ」
「だが、どんな新型だって、戦車の性能の違いが、必ずしも戦局を左右するとは限らないんじゃないか?
現に、ソ連戦の一年前のフランス攻防戦では戦車の性能はむしろドイツ軍の方が劣っていた。
ドイツ軍の精錬された軍に比べて、ソ連はスターリンが粛清したために将校が人材不足だったし」
「そうよね。なんたって大佐以上の高級将校の65%が逮捕されてからまだ3年でしょ?
そんな簡単に軍の機能が復活するとは思えないわ。
おまけにソ連はこの侵攻に対して全くの無防備だったんでしょ?
スターリンの「全く他人が信用できない症候群」が発病してたんだから」
「その通り。これがフランスやイギリスだったらT−34があったところで将校がいないから問題じゃなかった。
しかし、相手はソ連だった。
これが最大のネックとなる」
「どういうこと?」
「ソ連軍はたしかに高級将校には不足していた。
だが、一般兵士の人的資源には全く事をかかなかった。
なにせ土地が広いから人間の数だけならドイツの何倍もいる。
そこでソ連軍はドイツ軍の進撃を体を張って止めたんだ」
「そりゃ外交ルートじゃ止まらないだろ?」
「違う。そーいう意味じゃない。
文字通り体で止めたんだよ」
「わからないわね。つまりどういうことなの?」
「つまりだ。
ソ連はドイツ軍に対して、人間も戦車もベルトコンベア式に突撃させてドイツ軍の足を止めていたんだ」
「はぁ?」
「ベルトコンベア式?」
「要するにな。
そこらへんで農業をやってた若者やおっさんたちを国中からかき集めて銃を持たせる。
ロクな訓練もさせず、戦場へ列車で送り込み、あとは政治将校が笛を吹いて突撃開始。
ドイツ軍は、「ウラー」と叫びながら突撃してくる赤軍兵士に対してマシンガンや戦車砲で撃退する。
当然その兵士たちは死んでしまうわけだ」
「そりゃ、死ぬわな」
「だがソ連兵士は死んだ兵士たちの屍を越えて、次から次へと突撃してくる。
撃っても撃っても、「ウラー」と叫びながら突撃してくる。
当然ドイツ軍も応戦、あっさりとソ連兵士が死ぬ。
だがそれでもソ連兵士が突撃してくる。
撃っても撃ってもキリがない
それでもソ連兵士は突撃を繰り返す。
逃げようとする兵士には政治将校が味方を撃ち殺し、やっぱり突撃を繰り返させる。
この繰り返しだ」
「ちょ、ちょっと待ってよ! なんなのその戦い方は!?」
「これが共産主義国家ソ連の戦術、すなわち人海戦術だ。
敵が一万発の弾を持っていたら、こっちは二万人の兵士で突撃すれば勝てる
その結果、兵士が一万人死のうと一向に気にしない。
ドイツ軍の足を一日止めるのに一万人死んでも、次の日には一万人の兵士が送り込まれてくる。
作戦もクソもない。
人も戦車もひたすら突撃のみ。
相手の武器弾薬を文字通り体を張って減らすわけだ」
「おいおい・・・・・」
「T−34はドイツ軍戦車よりも射程が長かった。
だから射程外から攻撃すれば無傷で敵を破壊できるんだ。
だが実際のソ連軍は突撃をした」
「ちょっと待て。T−34はドイツ軍の射程よりも長いんだろ?」
「ああ、戦車の砲弾ってのは当然近い方が威力が上がる。
だから自分は相手を倒せるが、相手は自分を倒せない距離。
この理想的な距離で戦えば一方的な展開で戦うことができる。
この場合、T−34はドイツ戦車よりも射程が長かった」
「つまりT−34なら無傷でドイツ戦車を倒すことも可能だったってことだよな?」
「その通りだ。T−34が数を並べて射程外から一斉射撃をしてきたらドイツ軍はまったく歯が立たなかっただろう」
「だがソ連軍は突撃したんだよな?」
「ああ。一体何を思ったか、こっちが大砲を向けて待っている射程圏内に自分から、しかも単独で突っ込んできた。
おかげでドイツ軍は、真っ向勝負ではまるで歯が立たないT−34を何とか倒すことができたわけだ」
「なぜそんなアホなことを!?」
「だってソ連だぞ?」
「・・・・・・・・理解できん」
「まあ、理解しろというほうが無理だろう。
何せ大佐以上の高級将校の65パーセントは逮捕されてしまったため、ソ連軍はまともな作戦など取れず、ただ兵士に突撃を命じ、ロシアの若者たちは血の海で溺れていった。
スターリンは全部隊へ退却を禁じた。
これを破った将軍は全て死刑。その家族も同罪。
行くも地獄、去るも地獄。
ソ連兵士には死あるのみ」
「何考えてるんだあいつらは!?」
「勝利こそ全て
頭の中はそれだけだ。
なんせスターリンは戦争の前に2000万人以上を殺した男だ。
一万や二万の人間が死のうとドイツ軍の進撃さえ止められればそれでいいとでも思っていたんだろうよ。
旧日本軍のどこが「世界でもっとも酷い軍」だ?
旧日本軍の悪口を坦々と語る人間がわたしにはさっぱり理解できない。
どう見てもソ連の方が酷いと思うのだがな。
まぁそれは人それぞれ。
どうでもいいことだ。
そして、この突撃が大好きな民族ロシア人の思想は戦車にもそのまま受け継がれている。
ヴォルフ、ソ連戦車の特徴を言ってやれ」
「はい、ソ連戦車の特徴は、修理やメンテナンスを全く考慮していないということだ。
シフトレバーをハンマーでぶん殴らないとギアが入らない。
敵との戦闘で戦車がぶっ壊れたら、壊れた部品ごと全部取り替える。
例えばエンジンの一部のパーツが壊れたら普通は分解してそのパーツだけ取り替えるだろう。
だが、ソ連の場合はエンジンそのものを取り替える。
修理やメンテナンスを考えないために部品の数は少なく、単純で生産効率のみは跳ね上がる。
このようにしてソ連軍はドイツ軍の足を止めていった」
「かくしてドイツ軍の南方集団はT−34と泥将軍、そしてソ連の人海戦術の前に苦戦することになる」
「凄いわねぇ・・・・」
「だろ? 誰だ、「旧日本軍は世界一無謀な作戦を繰り返していた最低の軍」なんて言ったのは?
ソ連軍に比べれば、旧日本軍が可愛く見えるぜ」
「第二次世界大戦におけるソ連の死者が2000万人を超えている理由がよくわかった・・・・。
これがソ連か・・・・・・」
「どうだ、凄いだろ?」
「なんであんたが威張るのよ?」
「バルバロッサ作戦から一ヶ月が経った1941年7月、バルバロッサ作戦の初期段階が完了するにつれ、次の作戦の具体的な方針を決める会議が行われた。
中央軍集団は、北のレニングラード攻略を手伝うべきか?
南のキエフ攻略を手伝うべきか?
それともこのまま首都モスワクを目指すべきか?」
「やっぱ首都を落とすべきだろう。頭を落とせば胴体は消滅する」
「ドイツ軍の首脳部は首都モスワク侵攻が最優先であるという統一見解を持っていた。
しかし、パーキンソン病が発病していたヒトラー総統は南のキエフを落とそうとしてモスクワ攻略を後回しにすることにした」
「なんで? 首都モスクワが目と鼻の先にあるならさっさとモスクワを落とせばいいじゃない」
「同じセリフをグデーリアン将軍
も言った。
だが、ヒトラー総統はこう言って彼の意見を一蹴したんだ」
「将軍、あなたは戦争経済をご存知ではない」
「何それ?」
「ウクライナには石油資源があるし、同時に敵の補給路でもあった。
ここを叩けばドイツには資源が入ってきて経済が潤うということを言っていたんだ。
戦争をすることで潤う経済、つまりは戦争経済だ」
「それはつまり、ペンタゴン(米国国防省)がダミー会社を通じて、中東のゲリラから南米のテロリストを相手にお商売をして米国内の経済を潤わせていることなのでしょうか?」
「まあそんなところだ。要するに戦争特需ってのはとっても美味しいってことだ」
「さて、話を元に戻そう。
1941年8月、ヒトラー総統はバルバロッサ作戦第二段階としてウクライナ地方を選んだ。
そのため中央軍集団から援軍が派遣され、見事にキエフは落ちた。
だが、その代償に時間という財産を失ってしまうことになった。
このキエフ包囲戦でモスクワ攻略はさらに延長されてしまうことになる。
1941年9月16日、ヒトラー総統はモスクワ攻略作戦 「オペレーション・タイフーン」を発令させる。
タイフーン作戦は、北方軍集団と中央軍集団がモスクワの北と南から迂回接近、包囲、占領を目的とした作戦だ。
そして9月30日にタイフン作戦が始動された。
ドイツ軍は全力をあげて首都モスクワへ集結、一気に独ソ戦に決着をつけようとした。
しかし中央軍集団のグデーリアン将軍
率いる部隊がモスクワ防衛を目的とするT−34の部隊と戦闘を開始。
戦車部隊の父と呼ばれた疾風ハインツでさえ、大苦戦をしいらげられてしまう」
「先ほども言ったとおり、この頃になるとロシアの秋の長雨により、舗装もされていないソ連の道路は泥沼と化してしまった。
戦車部隊は全く動けず、続々と集結するソ連の大軍の前にいたずらに物資と時間のみを失っていくことになる。
それから1ヶ月以上が経ち、冬がやってきた。
泥沼と化した地面は凍り、戦車部隊も前進することが可能となった」
「泥将軍が去ったわけね」
「たしかに泥将軍は去った。
10月末までは泥沼に悩まされたドイツ軍戦車も、11月になると地面が凍り付き前進することが可能となった。
だが11月末になると事態は悪化した。
ナポレオンの軍隊さえも撃退したロシアの冬将軍が到来したんだ」
「出たな!」
「さらに不運は続く。
この年は歴史的な大寒波に見舞われ、ロシアの大地は零下40度以下まで下がるという氷の世界と化していたんだ。
雪が降り、地面は凍りつく。
地面と共に戦車までもが凍り付き、機械に塗るオイルさえも凍ってしまう。
火を炊こうにも油が凍っていて暖房器具は壊れ、マッチにさえ火がつかない。
寒さと飢えがドイツ軍を襲い、補給もままならず、前へも後ろへも下がれないドイツ軍の兵士は凍傷と飢え、そして凍死という最悪の状況に見舞われる。
その凍死者数は戦死者数を遥かに上回った。
ソ連軍よりも、冬将軍の方が強敵だったのだ」
「最前線はモスクワ近郊まで達していた。
だが、進めど進めど現れるソ連の大軍と、それ以上の強敵冬将軍がドイツ軍の進撃を阻む。
生きることでさえ困難な状況で、戦争続行は不可能だった」
「ドイツ軍は1941年12月5日にモスクワ撤退を余儀なくされた。
各地で補給路がたたれ、孤立したドイツ軍はソ連の大軍の前に次々と破れていく。
だがヒトラー総統は死守命令を出した。
撤退は許さん、全員その場を死守せよ
無情な命令が最後の希望さえも奪っていった。
このような無情な命令には従えない。
当然将軍たちはヒトラー総統へ抗議を申し出た。
元はと言えば冬将軍を舐めていたヒトラー総統が、「先にキエフを落とそう」などと言ったためにこのような事態に陥ったのだからな。
だが、ヒトラー総統はこの抗議を受け入れず、それどころか作戦失敗の責任を第2戦車集団司令官グデーリアン、
第4戦車集団司令官ヘープナー、中央軍集団司令官ボックに押し付け、三人を罷免した」
「酷い話ね・・・・」
「かくして2ヶ月で終わるはずだったソ連攻略電撃戦は、腰抜けのイタ公が足を引っ張ったために失敗に終わった。
イタリアさえ勝手に動かなければ、バルバロッサ作戦は5月初頭には開始され、T−34の数が揃う前に戦争が始められることができた。
T−34と泥将軍さえなければ南方集団も苦戦せず、よってヒトラー総統がキエフを落とそうなどと言い出すこともなかった。
総統が何も言わなければ主力部隊はモスクワに進撃、冬将軍が到来する前に総攻撃を仕掛けることも可能だった。
つまり、イタリアさえ何もしなければモスクワは落ちていたということだ。
ソ連政府はモスクワが落ちてもウラル山脈に篭って徹底抗戦をするつもりだったらしいが、それでもソ連の力が地の底まで落ちていたことには違いない。
このタイフーン作戦失敗直後の12月8日、真珠湾攻撃で日本がアメリカに宣戦布告、それを口実にアメリカが参戦してくることになった。
ドイツは大戦初頭に恐れていた東西からの挟み撃ちを喰らうことになる」
「イギリスのチャーチルは宿敵ソ連と、対ドイツの構えからソ連と手を結ぶことになる。
チャーチルはこのとき、
「ドイツを倒す為ならば悪魔→
とだって手を結ぶだろう」
というコメントを残している。
はっきりわかることはチャーチルはソ連が大ッ嫌いだってことだ」
「利害の一致から一時的に手を組んだわけね」
「そうだ。このあと攻めることも撤退することもできないドイツ軍は、一進一退の持久戦を強いられることになった。
泥沼の東部戦線の最初の年、1941年はソ連の勝利に終わった。
1942年の3月までのドイツ軍の死者、負傷者、捕虜は全軍で100万人を超えていたと言われる。
まあ、ソ連軍の死者はその数倍なのだがな。
1942年の夏まで両軍とも大きな戦いにはならず、夏の決戦に向けて独ソ両軍ともに英気を養うことになる」
「酷い被害ね・・・・・」
「これが泥沼の東部前線。
最初の一年で第二次大戦の日本の総死者数300万を軽く上回っているというのは凄いな・・・・」
「というわけでキリがいいので、4時間目はここで終了だ。
これだけ読めばわかるだろう。
イタリアの恐ろしさが」
「ドイツ最大の敵はソ連でも、冬将軍でも、ましてやアメリカでもなかった。
イタリア。
この長靴の形をした国が最強の敵だったんだ」
「ドイツもまさかイタリアがここまでやるとは思ってなかったでしょうね」
「ああ。間違いなくドイツ史上最大のミスはイタリアと手を組んだことだ。
結局、イタリアが足を引っ張ったせいでドイツはソ連に負けることになる。
ドイツがソ連を倒せなかったから、日本はアメリカと正面から戦うことになり、結局は敗戦だ。
あのときイタ公が何もしなかったら!」
「やめておけヴォルフ。いくら言っても過去は変わらない」
「でも大尉っ! くやしくないんですか!? あいつらが!
あいつらが勝手に動いたせいで、ドイツはソ連に負けることになるんですよ!」
「・・・言うな。それ以上は・・・・。頼む。それ以上言ったら・・・。わたしは泣いてしまうかも知れない・・・」
「大、尉・・・?」
「何も言うな・・・・。ただ・・・ただちょっと胸を貸してくれ・・・・・ちょっとでいい・・・・」
「大尉・・・・」
「ヴォルフ・・・・」
「・・・・・・・・。どうでもいいけどあんたら腐ったラブコメは他所でやってくれないかしら?
見てるとぶん殴りたくなってくるんだけどねぇ・・・」
「おいおい・・・・」
「誰がラブコメをしている! ちょっと慰めてもらっただけだ!」
「・・・それをラブコメって言うんだけどね」
「それはそうとその頃のイタリアの皆さんは何をしていたんでしょうか?」
「それについてはDAKについて語らねばならない。
というわけでモスクワ攻略にドイツ軍の主力が勤しんでいたときに、ロンメル率いるDAKは何をしていたか?
次回はそこを語ることにする。
というわけで休み時間だ」