
ソフィア先生の補習授業

「さて、三時間目はいよいよ我が最強のドイツ軍が世界にその名を轟かせるポーランド電撃戦からだ」
「最強ねぇ・・・。負けたくせに・・・・」
「それを言うな。だいたい国力差が40対1なのに、6年間も頑張ったんだぞ?
逆に言えば、国力差が40対1なのに、戦争終結まで6年間もかかった連合軍に問題があったような気がしないか?
将棋みたいに五分五分の戦力差なら勝ってたんだ。
湾岸戦争でさえここまで戦力差は大きくなかったんだぞ。
たった1ヶ月で負けたフセインと一緒にするな。
質だけならドイツ軍は世界最強だ」
「・・・でも負けたくせに・・・・」
「このクソアマ・・・っ! しょうがないだろ! 物量で押されちまったんだから!
だけどな! 負けたドイツの戦死者が450万人に対して、勝ったソ連の死者は2000万人だぞ!
第二次大戦はベトナム戦争と同じで勝った方が死者が多いんだ!」
「むぅ・・・。ソ連では第二次大戦の戦死者よりも、スターリンが粛清した数の方が多いのか・・・・。恐ろしい国だな・・・・」
「・・・・・・をい、感心するところが違うぞ」
「いい加減にせんか貴様らっ!」
「大尉・・・・・・」
「まったく・・・さっきから聞いていれば、物量が何だ!
そんなものは敗因ではない!」
「は? 圧倒的な物量の差が敗因だったのでは・・・・・」
「ドイツと日本が負けたのはイタリアのせいだ! 以上!」
「・・・・・・・・・・・」
「結局、その結論か・・・・」
「それはともかく、ポーランド戦はどうなったのでしょうか?」
「うむ、1939年8月25日、ポーランドはイギリスと相互条約を結んだ。
このためヒトラー総統
は様子見のために開戦を遅らせたが、ポーランドは全く譲歩する様子がない。
23日には、ソ連との同盟が成立したため、こりゃいけるだろ、ということで9月1日に開戦した。
開戦理由は、「ポーランドが先に仕掛けた」とヒトラー総統がでっち上げたためだが、戦争なんてものは問答無用ではじまるのが常識なので、特に珍しいことではない。
ドイツ軍の兵力は、戦車・装甲車は3100両、航空機は4300。
対するポーランド軍の戦車・装甲車は600両、航空機は900。
見て分かるように、ドイツ軍のほうが圧倒的に戦力が上だった」
「どうして第一次大戦戦勝国のポーランドは、軍備制限されていたドイツよりも戦力が低かったんですか?」
「それは地図上のドイツの位置が理由にある。ドイツが嫌いなフランス・イギリスは、ドイツ牽制のためにポーランドと手を組んでいた。
その上、ポーランドの後ろにはロシアがある。
第一次大戦戦勝国ということでポーランドは、「ドイツは周りが敵ばかりということで動くに動けない」と思っていたのだ。
そしてそれ以上の理由が戦車の運用法にあった。
当時、戦車に対しての考え方は塹壕突破のための兵器であり、あくまで歩兵の補助的なものだった。
なんせ第一次大戦の戦車と言えば・・・・」
← ドイツA7V突撃戦車
← ドイツLK.I/LK.II軽戦車
← ドイツA7V/U突撃戦車
← ドイツKワーゲン超重戦車
「上から三つ目の写真はMk4の雄形じゃないの?」
「問題ない。言わなければ誰にもわからん。」
「そーいう問題じゃねぇだろう・・・」
「それより、間違ってるとよくわかったな? 私のような一般人には、間違いかどうかわからなかったぞ?」
「誰が一般人よ・・・この程度の違いを見分ける事なんて、乙女として当然よ!」
「・・・・まあ、頭の弱い発言は無視しておいて話を進めるぞ。当時の戦車というのはどこの国も、このようなアニメもどきの化け物だった。
当然、こんなものを主力兵器にしようなどと考える人間もおらず、戦車は数があってもそれほど役に立たない、と考えていていたわけだな。
これは旧日本軍にも似たような思想があり、戦争の主役はあくまで歩兵と考えていたのだ。
ポーランドには世界でもその名を馳せた騎兵隊があり、それが戦争の主役だと思っていた。
第一次大戦はそれで勝ったから、今回もうまくいくと思っていたのだ。
実際のところポーランド戦では、確かに戦車や航空機の数はドイツ軍が上だったが、ドイツ軍兵士150万人に対して、ポーランド軍兵士は250万人を越えていた。
その上、ドイツの背後には世界の強国イギリスとフランスがあった。
しかもこの二カ国はドイツが嫌いな上に、ポーランドと同盟国だ。
だから、戦車や航空機の数が少なくとも、ポーランドがしばらく持ちこたえれば、後ろから同盟軍のイギリスがドイツの背後を狙ってくれる。
さらにドイツは16年間徴兵制が禁止されており、兵士一人一人の実力は明らかに長年の訓練を受けたポーランドのほうが上だった。
実際にはドイツは徴兵制が禁止されていながらも、影で訓練していたのだが、公式には1935年までは徴兵制がなかったことになる。
少なくともポーランドにとってはドイツ兵は弱兵に映ったのだ。
とまぁこのような理由があり、ポーランドは負けるとは思っていなかった」
「ポーランドは第一次大戦に勝って調子に乗っていたのでしょうか?」
「そうだな。あまりに多くの勝利は兵を弱体化させる
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロも、中東で勝ちつづけていたアメリカが油断した為に起こってしまったと考えるのが妥当だ。
テロリストの動きを完全に読みきったと思い込み、安易にセキュリティーレベルを下げたためにあのような大惨事になってしまったのだ。
ドイツ軍は第一次大戦の敗因として二つを考えていた。
一つは、周りの敵を同時に敵に回すことによって包囲されてしまったこと。
そしてもう一つは、新兵器の戦車の能力を侮っていたことだ。
特にドイツは敗戦直後から戦車の研究をはじめ、モスクワ近郊ではソ連が呆気に取られるほどの演習を重ねていた。
「ドイツ戦車部隊の父」と呼ばれたハインツ・グデーリアン将軍
は、戦車の持つ機動性に注目した。
歩兵が時速5キロくらいでしか移動できないのに対して、戦車は時速30キロ近くで移動することができる。
単純計算で従来の6倍のスピードで作戦行動ができるわけだ。
一週間かかる距離も一日でたどり着くことができるわけだから、従来の軍事常識などなんの役にも立たない。
だがその戦車も歩兵と一緒に行動すれば、戦車の機動性を完全に生かしきることはできない。
そこでグデーリアン将軍は、戦車部隊を作り、この機動性を生かした戦術を生み出した。
これが世に言う電撃戦(ブリッツクリーク)の基本だ」
「1991年の湾岸戦争では、連合軍、とりわけ米軍のエイブラムスはこの電撃戦を参考にした戦術でイラク戦車を一方的にブチのめした。
←M1エイブラムス
グデーリアン将軍の戦術は半世紀経っても通用することが証明されたわけだな」
「さすが韋駄天ハインツですね」
「・・・・。疾風ハインツと言ってくれ。
どうしてそういう頭の悪い日本人がつけたような名前が一般で通用するんだ?」
「電撃戦は、急降下爆撃や砲撃により砲兵陣地などの障害物を破壊することからはじまる。
障害物が無くなったら機械化部隊である戦車師団や、自動車化師団などが戦線に穴を開け、敵を混乱に陥れながら戦線を断ち、敵を孤立させる。
その残った残敵を歩兵部隊が自軍の被害がもっとも少ない包囲戦に持ち込み、次々と陣地を占領していくというプロセスで、相手が戦況を立て直す前に決着をつけてしまう戦術だ。
ボクシングなどのスポーツ格闘技で、スタミナ不足の選手が早い時間でラッシュをかけて一気に試合を終わらせるのと同じだな。
この電撃戦に不可欠なものは、何よりも戦争前の準備だ。
自軍と敵戦力の差、配置。戦場の地形情報。
何より迅速に作業を進めるために臨機応変な判断と、それを可能にするための連絡機能が欠かせない。
ドイツ戦車には、指揮官車には強力な無線機があり、各個に任せて戦車が運用されていた。
対してポーランドの方は指揮官は戦場でも後ろにおり、連絡が遅かった。
戦況は刻々と変わっているのに、命令がそれに追いつかないのではポーランドに勝ち目などなかった。
地形情報としては、もともとヨーロッパは何度も何度も戦場になっているため、どの国も大概が地形を知っていた。
その上、ヒトラー総統は、戦争前のオリンピックで「聖火リレーの道を調べる」として、周辺諸国の道を全てチェックしていたのだ。
孫子の兵法書にある「戦いは始まる前に勝敗が決まっている」ということを実戦したのがポーランド電撃戦だった」
「イギリスやフランスはどうしたのよ?」
「イギリス・フランスは何もしなかった。
というより、なにもできなかったというのが適切だ
ポーランド戦がはじまってからフランスが動けるまでには17日間が必要だった。
しかし、このときにはすでにソ連がポーランドに侵攻しており、勝敗は明らかだった。
イギリスはもっと酷く、ようやく動ける状態になった頃にはすでに戦争は終わっていた。
結果だけを見ればドイツがポーランドを攻めても、イギリスやフランスは援軍を送らず、自分の戦力を温存していたということになる。
同盟国など当てにならないという歴史の証明というわけだ。
ドイツがヴェルサイユ条約を破棄した時点で、周辺諸国がさっさとドイツを包囲してしまえば第二次大戦は起きなかった。
なんとか戦争を回避できればいい。
このような 目先の安全しか考えない消極的な政策が結果的にドイツの戦力を増やしてしまうことにも気づかずにな。
湾岸戦争では、このときの教訓を生かし、クウェート侵攻をしたイラクが手がつけられなくなる前に潰した。
イラクが疲れた頃を狙って・・・・、なんてことをしていたら第二次大戦の二の舞だからな。
ブッシュ大統領は、「第二次大戦について書かれた本を読んで湾岸戦争に挑んだ」とも言っている。
これがまさしく 歴史に学ぶ ということだ。
ただ、湾岸戦争時の日本人にはそれが理解できなかったんだよ。
日本人は、第二次大戦から何の教訓も学んでないってことが世界中に暴露されちまったってわけだ」
「湾岸戦争では、アメリカは人工衛星からの衛星写真でイラクの地形を確認していた。
5ヶ月間の間、イラクに撤退を通告しながらも、一方では長い時間をかけて慎重に戦争の準備をしていたのだ。
1960年代、アメリカとソ連が国を挙げて宇宙競争をしていたのは、「月に行きたい」とかそーいうことは二の次だった。
ようするに人工衛星によって地の利がなくなってしまうこと。
これを恐れたんだ。
お互いが相手の戦力を確実に知ることができればできるほど、小細工は通用しなくなる。
たとえどんなに自然の要塞に守られていても、予めそれがわかっていれば意味はない。
どんな要塞だって弱点は見つかるものだ。
情報さえあればな。
現代の戦争は情報戦だ。より多くの情報をもつ陣営が勝つ」
「じゃあ、ベトナムで負けたのは、ジャングルが濃かったからなのか?」
「そうだ。あれがもし砂漠か、雪原だったら米軍の勝つ可能性は高かった。空爆が通用するからな。
まぁ、ゲリラ戦は敵の頭がどこにあるかわからんから、なかなか決着がつかないんだがな。
アフガンで、タリバン掃討に米軍がてこずっているものそのためだ。
はっきり言ってイラクを倒すだけなら、大したことはない。頭を潰せばいいんだからな」
「ポーランド電撃戦は、ドイツ軍の進撃にポーランド軍は全く対応できず、次々とドイツ軍の占領は広がっていった。
ポーランド戦開始から3日後、世界にその名を馳せていたポーランド軍 虎の子の騎兵旅団「ポモルスカ」が壊滅した。
これは長らく戦争の主役だった騎兵が完全に時代遅れになったことを示すことだった。
その上、9月17日にはソ連がポーランドに侵攻。
こうしてポーランド電撃戦は、ドイツ軍の圧倒的な勝利で幕を閉じた。
第一次大戦では、塹壕戦のために長期化、泥沼化した戦争が、この電撃戦のためにたったの27日間で終了したのだ」
「中欧の大国ポーランドは、時代に取り残されたために弱小国となってしまった。
そしてドイツ軍は、対フランス・イギリス連合軍戦の準備を始める」
「一方のソ連の行動を見てみると、実はドイツにも勝るとも劣らず戦争を仕掛けまくっている。
ポーランド侵攻後から一ヶ月後の1939年10月にバルト三国を併合したと思えば、11月にはフィンランドにも戦争を仕掛けた。
このソ連の動きに焦ったヒトラー総統は、影ながらフィンランドを応援した。
イギリス・フランスも、ここは一時手を結ぶとしてフィンランドを援護。
対ソ連包囲網を仕掛ける」
「ドイツは、英仏と戦争する準備をしながらも対ソ連戦で英仏と手を結んでいたわけ?」
「ドイツとソ連は同盟国なんだろ? それなのに足を引っ張るのか?」
「だから日本政府は「欧州情勢は複雑怪奇」と言っているんだ。
しかし、ヨーロッパ各国にとって外交なんてものは互いが互いを利用しあうのが常識なので、別に大したことではない。
ソ連が台頭すれば困るのはドイツ・イギリス・フランスも同じだからな。
イギリス、フランスはソ連に国際圧力をかけて、フィンランドから撤退させようとした。
国際連盟からソ連を排除したのがそれだ。
世界中で「ソ連とドイツは悪である」と声を揃えて平和を唱えた。
アホらしい。
ソ連がそんなことで引き下がると思ったら大間違いだ。
スターリンは自分の権力を固めるために2000万人以上を虐殺した男だぞ。
ソ連の最終目的は全世界を真っ赤に染めることだ。
アカどもにとって、ロシア革命などただの通過点(パッシングポイント)に過ぎない」
「世界を革命するためにっ!
が、あの方たちの最終目的なのでしょうか?」
「それはそうなんだが・・・・。なんでウテナ?」
「え? あれはそーいう漫画なのでは?」
「なぬ!? そうだったのか?」
「違うわよ」
「とにかくだ。
国際社会の圧力だけで戦争が回避できれば苦労などしない。
そんな前例はほとんどない。あえて挙げるとすれば、日本に対して行った三国干渉くらいのものだ。
だからこそイギリス、フランス、ドイツは国際社会の声など当てにせず、フィンランドを援護した。
結局、スターリンがポーランド戦の直前までに恐れていた 独英仏連合軍の対ソ連包囲網は可能性があったというわけだ」
「油断も隙もないわね・・・・」
「だからアメリカは中立不干渉のモンロー主義をとっていたんだ。
どこかと同盟すれば必ず戦争に巻き込まれる。
たとえ今日は味方だったとしても、明日はどうなるかわからない。
国家に真の友人はいない
いっそどことも同盟せず、自国から一歩も出ない代わり、他国を一歩も入れさせない。
そーしたほうがかえって安全なんだ。
同盟は諸刃の剣なんだよ」
「アメリカ以上に同盟の危険性をよく知っているのが永世中立国として名高い
スイス だ。
第一次大戦、第二次大戦を無傷で過ごした平和の国スイス。
だが、その平和は簡単に守れたわけではなかった。
スイスの中立宣言は周辺諸国から認められたものだったが、スイスの歴史を見てみると、実は中立宣言をしたあと二度も戦争に巻き込まれている。
1618年から30年間続いた30年戦争、この戦争はヨーロッパ最後の宗教戦争と呼ばれており、基本的にはドイツの宗教内戦だったんだが、オーストリア・デンマーク・スウェーデンがプロテスタント側につき、フランスがカトリック側についた。
ところがここに干渉国の同盟関係がこじれてイギリス・オランダ・スペインが口を出してきた。
かくして宗教よりも政治的な色が濃くなった30年戦争は、原型を止めない泥沼の長期戦となり、1648年、いい加減に疲れた各国がプロテスタントのカルヴィン派を公認することで一応の決着がついた」
「何百年も前から似たようなことはやってたわけだ。
ヨーロピアンはこれだから・・・・アホ じゃないのか?お前ら」
「周りを海に守られていたアメリカが偉そうに言うなよ。
周りが敵ばかりのヨーロッパの国はいつだって滅亡の危機にあったんだぞ。
それによくよくみればアジアもアフリカも似たようなことをしてる。
白も黄色も黒もやってることはそれほど大差がない」
「つまり人種差別はすること自体が無意味ということでしょうか?」
「白も黄色も黒も同レベルのアホってことね。なるほど、そりゃ人種差別がアホらしい考えってのが広まるはずだわ。
今時でも何を血迷ったか、「黒とユダヤの撲滅にご協力ください」ってほざいてる連中がいるけどあれって物凄くアホよね。
ユダヤ人は武器のセンスが凄くいいのに。デザートイーグルとか」
「いや、人種差別ってのはそーいう風にして撤廃されたわけじゃ・・・・それに武器のセンスって、でかくてゴツイだけじゃ・・・・まぁいい。
赤は最悪ということだけわかってればそれで」
「さて、この泥沼の30年戦争の戦後処理のウェストファリア条約で、スイスはオランダと共に独立を承認されたわけだ。
余談だが、このときの条約会議は史上最初の国際会議だったことでも知られている」
「どうしてスイスは中立が認められたのでしょうか? 普通、この手の小国は植民地にされてしまうでしょうに」
「簡単だ。
どこか交渉の場が無いと、どちらかが全滅するまで戦いは終わらない からだ。
イスラエルとパレスチナの中東戦争も、アラファト邸の周りが国際ジャーナリストの溜まり場として非武装地帯・交渉の場となっているからこそ、かろうじて全面戦争には発展しないで済んでいる。
これがなかったらアメリカとイラクが干渉して、ただでさえ泥沼なのに、収拾がつかなくなってしまう可能性があるからな。
30年戦争は、マキャベリの「君主論」が国家の血となり、肉となってきた頃に起きたために、直接は関係のない第三国がやたらと干渉しまくり、ただの小競り合いがすぐにヨーロッパを巻き込む大戦争に発展していった。
だから戦争が終わって平和になっても、
やつらはそのうち攻めて来るから先に潰そう、予防戦争だ
てなノリで、一向にヨーロッパが平和になることはなかった」
「むぅ・・・。マキャベリはマルクスと同じくらいえらいことをしてくれたな」
「いや、マルクスに比べれば遥かにマシだと思うぞ。マキャベリがなくても、東洋には孫子があるし、マキャベリがいなくても似たようなことを言うヤツは必ず出てきただろうな。
現に武田信玄は典型的なマキャベリストだし」
「そんなこんなで時は流れて1709年、つまりスイスが中立国家になって60年くらい後に、スイスはオーストリアの軍隊により侵略された。
オーストリアはプロイセンとドイツの覇権をめぐり、本家と元祖で争うラーメン屋の如く争っていたから、スイスを併合して力をつけたかったわけだ。
さらにそれから90年後の1798年には今度はフランスの軍隊によってスイスの中立は踏みにじられた。
フレンチのナポ公が世界征服なんぞという、チンギスハーン以来の誇大妄想に取り付かれたために、スイスは中立を認めたフランスに侵略されたわけだ」
「誇大妄想ならヒトラーもナポレオンには負けないと思うが・・・・・」
「要するに、中立国家スイスはオーストリアとフランスにより、二度までも侵略されたわけだな。
中立国家は、それだけで平和が維持されるということにはならない、ということが証明されたわけだ。
かくして泥沼と大混乱に陥ったナポレオン戦争が、冬将軍によって終わり、1815年にスイスはナポ公のしでかした後始末をするウイーン会議によって永世中立国家として再スタートした。
再スタートしたものの、中立を宣言したところでどいつもこいつも信用できない。
スターリンばりの「まったく他人が信用できない症候群」が発病したスイスは、重武装国家として歩きはじめた。
「スイスに手を出したらこっちもただではすまない」と相手に思わせるほどの軍備を整えたわけだ」
「だからヒトラーもスイスには手出ししなかったわけ?」
「そうだ。1939年9月にドイツ軍がポーランドに侵攻した日に、スイスは国家非常体制を発動、48時間以内に40万の大軍を国境に配備した。
スイスには、全ての工場が爆撃されて、武器が生産できなくなり、全ての畑が蹂躙されて、食料が作られない状態になっても、丸々一年間戦えるだけの武器弾薬と食料がある。
平和な小国のスイスは、合図一つで48時間以内に国民の一割が兵士という軍事国家に変身することが可能なのだ。
その上、スイスは山が多く、天然の要塞としての機能が充実している上に、スイス人は昔からヨーロッパ最強の傭兵として勇名を馳せていた。
21世紀現在でもバチカンのトップであるローマ法王のボディーガードはスイスの傭兵だ。
スイスは攻撃さえしなければ、向こうから攻めて来ることはない。
そう考えたヒトラー総統は、南のスイスを攻めるのをやめて、北のノルウェー、デンマークに狙いをつけた。
英仏戦を前にしてのこの戦いは、一見無意味に見えるがその目的はスウェーデンの鉄鉱山を未然にイギリスから守ることだった」
「第一次大戦以降、スイスに憧れる国が増えてノリと勢いだけで中立国を名乗る国が増えた。
ノルウェーとデンマークもその一つだ」
「ところがこのノルウェーとデンマークは当時流行っていた「武装解除」の雰囲気に流されてしまった。
武器があるから戦争が起きる。お互いの軍事力が他国が侵略できない戦力ならば戦争は起きないだろう。
なにせドイツはベルサイユ条約によって軍事力が縮小されてしまい、総兵力がたったの10万だ。何もできまい。
と、世の中を舐めていた考え方が流行っていたため、まさかドイツがソ連国内で軍備拡張していたとは予想もしなかった。
このように、安易に武装解除などすれば侵略国の野心に火をつけ、むしろ戦争の危険性を高めてしまう。
そーいうことだな。
他の国が何をしているかなど、完全に調べることは不可能だ。
隠蔽などいくらでもできる。
現在でも日本の企業が次々と不正をやっていたことが明らかになっているが、逆に言えばばれるまではわからなかったということだ。
軍事力も同じことが言える。
これらは1970年代まで世界が気がつかなかった法則で、米ソが仲良く緊張緩和(デタント)していったために、東南アジアが真っ赤に染まったことの理由でもある。
共産主義国家の口車に乗って安易に武装解除したために、朝鮮半島やベトナムで侵略戦争が勃発しまくったからな。
1980年代になると世界はようやくこの法則に気づき、レーガン大統領が軍拡したためにソ連の侵略を食い止めたのだ。
ただ、それが未だに理解できないのが日本ということだな」
「どうして日本は理解できないのでしょうか?」
「うーん。こーいうことを言っている人は昔から結構いるんだけどな。
ただそーいう人たちが1970年代に東南アジアでアカどもがやってることを言っても、日本共産党が「それはCIAの流した偽情報」って言うもんだから理解どころか、問題にすらならないんだ。
それどころか、「平和な世界を乱す軍国主義者」として社会的に抹殺してしまう。
歴史の教師でここに書いてあることを言ってる連中がほとんどいないのがその証拠だ。
こんなことを言ってたらすぐにクビにされちまうからな、言いたくても言えないってのが実状だろうよ。
それに、日本のマスコミは「世界は平和」っていう結論が先に来てからニュースを流すだろ?
官僚独裁ファシズム国家である現在の日本の状況じゃ国際状況は理解できねぇよ」
「そんなこんなで、ヒトラー総統も「第一次大戦で失った土地が手に入ればもう戦争はしない」とか、言って相手を油断させておきながら、一気に戦争を仕掛けたわけだ。
ドイツ軍がここまで強いとは思わなかったヨーロッパの各国は慌てふためき、何の対策もできないうちにドイツはノルウェー、デンマークを占領。
1940年4月のことだ。ノルウェーの方は辛うじてイギリスより先手を取れたが、
あれ? こんなもんか?
安易に武装解除した小国があまりにあっさりと敗れ去り、ヒトラー総統は、
むぅ・・・。ここはいっちょ世界征服でもやってみっか
と、自分が言った千年王国の野望を現実のものとし始めた」
「ようするにドイツを調子に乗らせちゃったわけね」
「まだまだイケる!
と、1940年5月には永世中立国を名乗っていたオランダ、ベルギーを占領することに成功した。
特にベルギーは兵器が優れていたため、ドイツ軍はベルギー製の兵器を使うことも多かった。
大戦中ベルギーはドイツ軍の兵器をずっと作らされることになる」
「だからベルギーはドイツが嫌いなのか」
「っていうかドイツはどこからも嫌われてるけどね」
「大丈夫。ソ連よりはマシだ」
「アレと比べるなよ・・・・」
「ついにアレ扱いなんですね」
「アレ扱いのソ連だが、ヒトラー総統がノリノリで世界征服をしてるのを見ていて
「おいどんも負けてはおれんでごわす!」
「と、偉大なるスタ公はルーマニアを侵略した。1940年6月のことだ。
これも独ソ不可侵条約の密約で決定していたことだから特に驚くべきことではない」
「偉大なるって、をい・・・・」
「いろんな意味で偉大でしょう」
「”いろんな”の中のほぼ100%が悪事というのは確かに偉大だな」
「なんか大航海時代のフランスとイギリスみたいだ。
周りに迷惑を掛けながら競争するところとか」
「ったくヨーロピアンはこれだから・・・・」
「問題ない。
世界は「白人はみんなそーいう人種」と思ってるから」
「SHIT! ヨーロッパのせいでアメリカが同類に見られるとはっ!」
「平気ですよ。あのときは仕方がなかったって言えば」
「それは問題解決になってないような・・・・」
「さて、ドイツとソ連が順調に勢力を広げているわけだが、
チョビ髭
& フデ髭
の世界征服の野望の前に、大英帝国の二重顎
ことチャーチル首相は焦った。
ところで、このデブのトミィ(英国野郎)
チョビ髭とフデ髭が手を組んだときに「なぁぁぁああんてこったぁ〜っ!」と、頭の上にブリキのタライが落ちてきたかのようなショックを受けたと言われている」
「大尉、いくらなんでもタライはないと思いますが・・・・。たしかにショックを受けたことは確かですけど・・・・」
「しかもなんでタシロ艦長? ガンバスターネタかい」
「タライですか・・・イギリスにもあったんですね」
「着目点が違うような・・・・・」
「チャー公は焦った!
いっか〜〜ん! このままではドイツとソ連に世界征服されてしまう!
そんなことになったら女王陛下がなんとお嘆きになることか・・・と!」
「WW2のときに女王なんていたっけ?」
「たしか第二次大戦当時のイギリス国王はジョージ6世で、エリザベス2世のお父様だったような気が・・・・」
「…まあそれはとりあえず置いといて。」
「置いてどうすんのよ…?」
「フッ・・・あのちっぽけな国から女王陛下をはずしたら、なにが残る?なにも残らんだろう。」
「たしかになにも残りませんね・・・・残る物をあえて挙げるとすれば、雑な料理ぐらいですね」
「ある意味哀れな国ね・・・・」
「所詮その程度の国ということだ。そういう訳でこれ以降も、あの国のトップは女王陛下として扱うぞ。」
「いい加減ねぇ・・・・」
「トミィの事など知ったことか。
連中は、「あなたの命より、お家の名誉の方が大事なのですよ。
だから死ぬときも必ず名誉の戦死になさい。
逃亡して処刑などされたらお家の名前に傷がつきます。
しかし、女王陛下から『サー』の称号をいただければ一族を挙げて祝い、子々孫々まで語り継がれる英雄になれます」
とか言って戦場に送り出すのだぞ。はっきり言って理解不能だ」
「・・・・。大尉、それは極少数の、騎士の家柄出身の職業軍人の”イカれた”家庭限定ではないでしょうか?」
「・・・・・・・・さて、チェンバレンのイ●ポ野郎に任せておけば女王陛下がお嘆きになる!
ということで、チャーチルはチェンバレンと首相を交代したわけだ」
「誤魔化したわね」
「●ンポって、をい・・・・。だんだん発言に品がなくなって来たな」
「戦争隠語なんてそんなもんだ。
だが、この程度でいちいち凹んでいたらベトナム戦争は語れない。
口の悪さならアメリカ人はおそらく世界一だ。
よかったな、おまえらの好きな「世界一」の称号だぞ。喜ぶがいい」
「・・・・やな「世界一」ね」
「さて、ドイツ軍はオランダとベルギーを倒し、とうとう長年の宿敵フランスとの決戦に挑むことになったわけだ。
英仏連合軍は対ドイツ戦に備え、ベルギー・フランス国境地帯に大規模な防衛線を引いた。
連合軍は膨大な予算をかけて作った『マジノ線』に絶対の自信を持っていた。
このマジノ線は地図を見ればわかるが、フランスとドイツの国境線に沿って作られた全長何百キロという超大規模な防衛ラインだ。
そしてそこには難攻不落の要塞がいくつもあり、正面からぶつかればドイツ軍としても勝ち目は薄かった。
だから、もしドイツが仕掛けて来るのならば第一次大戦と同じように、マジノ線の西端、つまりベルギー・オランダから英仏海峡に沿って攻めて来ると読んでいた。
過去の戦争の経験に基づいてな。
「天空の城・ラピュタ」に出てくる兵隊のように第二次大戦でも要塞に拘っていたのだ。
ポーランド戦で、あれだけ戦車が使えることが証明されたのにも関わらず、第一次大戦型の戦略をとったわけだ。
というわけで連合軍はオランダから英仏海峡に主力部隊を配置していた」
「だが、この連合軍の考えのさらに上を行くアイデアを出したのがドイツの超頭脳、
フリッツ・エーリヒ・フォン・レヴィンスキー・ゲナント・フォン・マンシュタイン将軍
だ」
「長いわねぇ・・・」
「とりあえずマンシュタイン将軍と呼ぶことにしよう。長いから
マンシュタイン将軍の作戦は、連合軍の裏をかき、北のオランダ方面ではなく、東のベルギー方面からドーバー海峡へ突破しようというものだ。
この作戦は一度は却下されたが、当初の作戦の書類を持った空軍の連絡機がベルギー領内に不時着してしまったため、採用された作戦だ。
もちろん、ヒトラー総統も最初からこちらの作戦案を支持していた。」
「マジノ線は完全無視か?」
「奇襲とは相手の裏をかくものだ。
相手が「しないだろう」と思うことをしなければ奇襲の意味がない。
連合軍は、マジノ線の西端にはアルデンヌの森があり、そこを戦車で突破するのは不可能であると判断して防備を薄くしておいた。
こないところに兵力をおいても仕方がない、その分をほかに回したほうがいい。そう思ったのだ。
だが、そのいい加減な判断が連合軍の命取りとなった。
ドイツ軍は、あらかじめ下調べをしておき、アルデンヌの森は戦車で突破可能ということを知っていたのだ。
そこでドイツ軍は主力部隊をアルデンヌ高原に送った。
この主力部隊にはデザート・フォックス(砂漠の狐)の異名を取るドイツ最高の将軍の一人、エルヴィン・ロンメル将軍
が参加している」
「のちのDAK(ドイツ・アフリカ軍団)を率いるロンメル将軍はこのフランス攻防戦でその名声を不動のものにしたんだ。
ロンメル閣下燃え〜っっ!!」
「連合軍を釣り上げるために、5月10日、まずボック率いるB軍集団がオランダ・ベルギー北部に侵入した。もちろん、陽動だがな。
ドイツ軍と連合軍の兵力は互角、戦車の性能はむしろフランス製のほうが上だった」
「つまり、連合軍がやや有利ということでしょうか?」
「そういうことだ。
そして、ルントシュテット率いるA軍集団がルクセンブルクからアルデンヌの森を通過し、
フランス・ベルギー国境沿いに一気に海峡への突破を図った。
連合軍は予想もしなかったフランス国内からの攻撃を喰らうことになる。
連合軍は大混乱に陥った。前と後ろから挟みうちを喰らい、連合軍はドイツ軍に包囲されてしまったわけだ。
どんなに優れた兵器や兵士も補給なしでは戦えない。
連合軍は補給路をたたれ、次々に孤立していき、ドイツ軍は、頑固な要塞に立て篭もる連合軍を圧倒的な展開でぶちのめすことに成功する」
「補給路を潰されると要塞に立て篭もってる連中はすぐに降伏してきた。
空に銃弾を一発撃って、「我々は抵抗した。名誉ある扱いを頼む」とか言ってゾロゾロ投降してきたわけだ。
味方が投降し始めるのを見ると、次から次へと連鎖反応で投降し、要塞はあっという間に落ちた」
「・・・・・やる気ある?」
「ないっ!」
「またはっきりと言うな・・・・・」
「大丈夫。イタリアよりはマシだ。
なんせイタリアは、ここまでやる気のないフランスにまで馬鹿にされることになるんだからな」
「・・・・マジで?」
「だから言っているだろう? イタ公は使えないって。
あいつらのやる気の無さは尋常じゃないんだよ。
特に第二次大戦のイタリアは歴史上類を見ないほどやる気のない軍隊なんだ。
『世界一腰抜けの軍隊』の汚名は伊達じゃない!」
「・・・なんでνガンダム?」
「イタリアの悪口はもう少しあとだ。
こうして連合軍の主力を打ち破ったドイツ軍は制空権をも支配し、数と質で勝るフランス軍戦車を散開させ、各個撃破していった。
どんなに優秀な戦車も、数をそろえたチームワークがなければただの箱だ。
こうして5月25日には英仏海峡にある港町のダンケルクまで25キロの地点まで進撃した。
しかし、ここでヒトラー総統から進撃中止の命令が下る。
あとは空軍が空から残討すればいい、とこう考えていたのだ。
しかし、天候が悪くなり、地面がぬかるんだために機甲師団も進軍が止まる。
戦車は地面が泥になると動けなくなるのだ。
結果として、この遅れにより連合軍兵士はイギリスへと逃げることに成功する。
だが、フランス攻略作戦は大成功を収めたことには変わりない。
あとには大量の連合軍の兵器が残り、ドイツ軍はさらに兵力を増強させていく。
主力部隊が破れ、残りの兵士もイギリスに撤退してしまった以上、フランスに戦う力など残っていなかった。
ドイツ軍は大した戦いもなしに、フランス国内へ歩を進め、6月14日には戦わずして首都パリへ入場。

「ナポレオンがフランス軍の勝利を称えるためにつくった凱旋門をドイツ戦車が通り、芸術の都パリにドイツの芸術作品である戦車が進駐した」
「芸術? 戦車が?」
「ドイツ戦車ってのは、アメリカの大量生産と違って職人の命が篭っている。
生産効率を下げてまでも装甲に丸みをつけようとか、やたらと拘るわけだ」
「ドイツ戦車は芸術品よ。うふふ〜、あの丸みを帯びたライン萌え〜☆」
「つまりパリに戦車はよく似合うということでしょうか?」
「似合うかぁ?」
「パリが落ちたことにより、フランスの負けは決定した。一週間後の6月22日には休戦調印が押され、ドイツは敗戦の屈辱を挽回したのだ。
かくしてポーランド電撃戦から僅か10ヶ月でドイツはヨーロッパを占領下に置いた。
この時点でドイツの敵はイギリスのみになったわけだ。イタリアやソ連は同盟国だからな」
「このときのアメリカはモンロー主義で揉めていた。
アメリカには関係ないという保守派と、今こそアメリカは世界平和のために立つべきだというタカ派で国内世論は真っ二つに割れていたんだ。
保守派の言い分は、ナポレオンと同じで勝手に自滅するから介入する必要はないということだった。
しかし、タカ派は、ナポレオンの頃とは技術が違う。海という天然の要塞も昔ほど当てにならない、それどころか、いざアメリカが戦うときにドイツがアメリカを凌ぐほどの帝国になっていたらどうする?と言っていた」
「まるで湾岸戦争ですね。
あのときも、クウェートが落ちた時点でイラクを潰しておかねばサウジアラビアがやられる。
その次はバーレン、アラブ首相国連邦。
中東全域を支配して強くなればイランも倒せる。そうなったらアフガンへ侵攻。
力をつけたイラクがソ連と手を組んで、ヨーロッパやパキスタンへ侵攻するのは時間の問題とかなんとか」
「湾岸戦争と第二次大戦初期は状況が非常に似ているんだ。
ここまで状況が酷似しているシチュエーションは他にはない。
だからこそトルコやエジプト、パキスタンなどの貧乏国でさえ兵を出したんだ。
それはそれとして、ドイツ軍は間髪いれず7月にはイギリス攻略作戦を開始する」
「休みナシですね」
「自分が休めば相手も休むことになる。
ところが今度はこの間髪入れない電撃戦が仇となった。
なにせフランス攻略には半年間近くの準備期間があったわけだが、あまりにもフランスがあっけなく降伏してしまっために、
ドイツ軍は対イギリス戦には確固たる作戦がなかったのだ。しかも、陸軍と海軍の意見が対立し、空軍任せになってしまった。
電撃戦は戦争前の準備が全てを左右する。
ドイツ軍は準備不足のままイギリスを攻めることになった。
時間が経てば経つほど、イギリス軍が反撃する可能性は大きくなるし、何よりさっさとイギリスを倒して置かないとアメリカが重い腰をあげる。
そうなれば国力で劣るドイツ軍は完全不利だ。
というわけで独英戦がはじまる。
イギリスはヨーロッパの島国で、直接戦車は侵入できない。
そこで必然的に空中戦になるわけだが、陸の国であるドイツは空軍や海軍の力が強くなかった。
その時、イギリスの主力戦闘機スピットファイアがドイツ軍の前に立ちはだかった。
ドイツ軍初の本格的空中戦、これが有名な『バトル・オブ・ブリテン』の空中戦だ。
イギリス本土上陸作戦「あしか作戦」も失敗に終わり、このままイギリスを攻めてもラチが開かないということでドイツ軍は一旦引き揚げることにした。
1940年9月のことだ」
「諦めちゃったわけね」
「しょうがないだろ。海が邪魔なんだから。だがこの戦いでロンドンは爆撃され、イギリスはかなりのダメージを負った。
勝てはしなかったが、イギリスが動けなくなるくらいのダメージは負わせたわけだ」
「一方のアメリカはヨーロッパを着実に征服しつつあるドイツと戦う理由が欲しかった。
このままドイツを放っておけば、ドイツ第三帝国はヨーロッパ全土を支配する大帝国となってアメリカとの衝突は時間の問題だったからな。
それよりもイギリスが負けてヨーロッパが全部征服されたら、連合軍に貸した金が帰って来ない。
この対枢軸国のために連合国へ貸した金は500億ドル以上と言われている。
儲かるのはいいが、貸した相手が倒れたら大損、というわけだ。
ここまで言えばわかるように、ドイツを倒すことはアメリカを守ることでもあった。
しかし、自分から仕掛けるというのはアメリカの伝統を汚すことになる。
アメリカは自称「正義の国」だからな、あくまで自称だが」
「なぬっ! それはまるでアメリカが正義の国じゃないみたいじゃないかっ!?」
「そうよ! アメリカは正義の国よ!」
「いーや、アメリカは正義の国じゃない。自由の国だ」
「? どーいうこった」
「だから文字通り自由の国だって言ってんだよ。
アジア系先住民族の土地を力付くで奪っておいて「正義」と言い張るところとかな。
何やっても自由だろ? 羨ましい限りだな」
「ぐぅっ! 痛いところをっ! しかし、ソ連よりはよっぽどマシじゃないかっ!」
「アレと比べるな、アレと。
ソ連と比べればどんな国だって良く見える
アレは別物だ。
なんせヨーロッパ最悪の国だからな」
「中国はどうでしょう?」
「おおっ! むぅ・・・・。確かにソ連に対抗できる国と言えば中国くらいしかないな。
アジア最悪の国ならなんとか対抗できるかも知れん。北朝鮮も密度は濃いがなんせ国が小さいしな・・・。
とにかく世界最悪の国はソ連か中国のどちらかだな。
イラクなどソ連や中国には足元にも及ばない」
「下には下がいるってことね」
「で、その自称「自由と正義の国」のアメリカだが、ドイツと戦う理由欲しさに東洋の小国である日本に圧力を仕掛け始める。
日本はドイツと同盟国だった。
1936年には対ソ連包囲網である日独伊防共協定を成立させているし、1940年には日独伊三国同盟を成立させているからな。
というわけで対ドイツ戦に参加する口実欲しさに、日本を追い詰めて暴走させようとするわけだ。
元々アジアの利権争いでも、日本とはそろそろ決着をつけたいと思っていたからちょうどよかったわけだな。
アメリカは各国に国際圧力をかけ、日本の石油資源ルートを断ち始めた。
近代国家は、その血液である石油が無ければ自滅する。
アメリカの予想通り、日本はついにその牙をむいた。
1941年12月8日の真珠湾攻撃で日本はアメリカに宣戦を布告。
これはおまけのようなもので、1941年12月11日にドイツとイタリアがアメリカに対して宣戦を布告した」
「アメリカにとってすれば日本なんてどうでもよかった。いつでも滅ぼせるからな。
かくしてアメリカはドイツと戦う”表向きは正当に見える”理由を手に入れたわけだ」
「表向きだとっ!? アメリカに奇襲をかけたのは日本が先だ!」
「実はそれも怪しいものがあってな。アメリカはあまり乗り気じゃなかった国民に喝を入れてやるために、わざとこの奇襲を喰らった節があるんだ。
現に日本は真珠湾攻撃と同時に宣戦を布告している」
「そんなことはどうでもいい。
半世紀前の、しかも当事者がほとんど死んでいるような昔話を今さら穿り返しも意味がない。
目の前の現実を見れば、そんな半世紀も昔のことよりもよっぽど解決しなければならんような面倒事が転がっているではないか。
第二次大戦など、あの頃の兵器はカッコよかったとか思い出を振り返ればそれでいいのだ」
「カッコよかったってをい・・・第二次大戦の価値はそれだけかい」
「他に何がある?
第二次大戦というのは・・・
あの頃のドイツの戦車はカッコよかった。
あの頃のドイツのマシンガンはカッコよかった。
あの頃のドイツの拳銃はデザインが気にいらなかった。
あの頃のドイツの旗がカッコよかった。
あの頃のドイツの制服がカッコよかった。
あの頃のドイツは夢があった。
あの頃のドイツは輝いていた。
あの頃のドイツのノリが羨ましい。
だから俺たちもやろうぜ
・・・とか、そーいう角度で見るものだろう?」
「どーいう角度だ・・・。だいたい第二次大戦を一体なんだと思って――――」
「世界はでっかいオモチャ箱だ」
「・・・・・・」
「だいたい真珠湾攻撃がなくても、どこかで日本は暴走した。
いや、させられたと言ったほうがいいだろう。
戦後の東京裁判で、国際法のプロであるパル判事は東条英機ら日本の戦争指導者に対し、「こんなことをされたらどこの国だってアメリカに宣戦布告するだろう、よって全員無罪」という判決を出している」
「でも東条英機さんたちはみんな死刑でしたよ? なんででしょうか?」
「決まっている。戦争責任を日本に押し付けたかったからだ。
「悪いのは全部ドイツと日本」で片付けたほうが、その後の冷戦で優位にことを進められる。
アメリカやイギリスとしてはドイツと日本がどうこうよりも、ソ連の方が敵だったからな」
「やっぱりソ連なのね・・・・・」
「当たり前だ。ドイツ、日本。
そんなものはアメリカにとっては1944年の「ノルマンディー上陸作戦」が成功した時点で大した問題じゃなかった。
ノルマンディーで戦争は終わったんだよ。
米英首脳部の頭の中は一つ。
ドイツと日本を倒したあとに、ソ連をどうやって倒すか?
日独という共通の敵を失えば米英とソ連の対立は確実になる。
そんなことはソ連誕生当時からわかっていたことだ。
第二次世界大戦は、日独のみを見ているだけではただの昔話になってしまう。
第二次世界大戦は、ソ連を視野に入れないと研究する意味などない」
「それにパル判事はインド人だからな。イギリスの植民地であるインドは、実は日本に同情していた。
なにせ日本軍に呼応してイギリスに反乱を起こした事件すらある。
だからパル判事の意見など最初から無視することは決まっていたんだ」
「日本にしたように、アメリカはこの手の「相手の選択肢を暴走のみにする」手段が上手い。
だから嫌われるわけだ」
「・・・・・・。だが、ソ連よりはマシだろ?」
「ああ。それだけは間違いない。
ソ連の場合は小細工なしでそのまま侵略するから」
「ソ連は自分の気持ちにストレートなんですね」
「ストレート過ぎるんだよ。
ソ連のやっていることは、好きな娘ができたからレイプ決行 これと同レベルだぜ」
「こうして日本はアメリカによって追い詰められ、日米戦争を起こし、太平洋で小さくドンパチをはじめることになった。
一方のヨーロッパの方を見てみると、イギリス攻略失敗により、ヨーロッパはイギリスとドイツ、そしてソ連の三国がヨーロッパの覇権を争う形になっていた。
ルーマニアを占領したソ連だが、ドイツにとってすれば重要な石油供給国であるルーマニアを占領されている上に、イギリスとソ連に挟み撃ちになっている形になっていた。
もしイギリスとソ連が手を組んだら?
ヨーロッパの同盟関係は利害の一致が乱れた時点で崩壊し、利害の一致が誕生した時点で成立する。
ドイツもソ連がフィンランドに侵攻した時点では敵にまわった。
その逆をやられたら?
1940年12月11、13日のベルリン会議でヒトラー総統はソ連とルーマニア分譲に関しての相談をした。
しかし、それはヒトラー総統の意図に沿うものではなかった」
「スターリンとしては、ドイツがでかくなるのは恐かったんだろうな。
イギリスを落としたら次の目標はソ連だから。
元々敵同士でもあるし」
「神に選ばれし無敵の集団であるドイツを舐めきったスタ公の態度にぶっちーん!と堪忍袋の尾がブチ切れたヒトラー総統は、対ソ連攻撃を正式に発動する」
「短気ねぇ・・・・」
「大丈夫。スターリンはもっと短気だ」
「だから何かあるたびにソ連と比べるんじゃないわよ。
あれは別物だって言ってたでしょ?アンタが」
「かくしてその別物であるソ連に宣戦布告したドイツは、史上最大の作戦「オペレーション・バルバロッサ」を発動させるのだが・・・・。
書くのが疲れたのでここまでにしておこう」
「史上最大の作戦って、ノルマンディー上陸作戦じゃないの?」
「ああ、ライアンおじいちゃんのホームビデオの」
ライアンおじいちゃんのホームビデオ
「ホームビデオって、をい・・・・。『プライベートライアン』はそーいう映画じゃないような・・・・」
「それじゃあ、「軍人ならば誰でもノルマンディーに参加してナチを倒したい」という、現代の鬱屈した米軍兵士にありがちな英雄願望を映像化したものということで」
「どっちかってーと、米軍兵士はランボーに憧れてるような気が・・・・」
「問題ない。俺も憧れてる」
「時代設定無茶苦茶なキャラだな」
「文句があるなら作者に言え作者に」
「それはどうでもいいんだけど・・・。で、どうなの? 「バルバロッサ」と「オーバーロード」じゃ、どっちが規模が上なのよ?」
「それは次の時間までのお楽しみだ。とりあえず3時間目は終了。休み時間だ」